よく咀嚼することは、ゆっくりと時間をかけて食物を味わうことです。食物は味覚だけでなく、視覚、嗅覚、触覚など五感で味わうものです。忙しい社会人は平均朝食時間が3分と食事に時間をかけず、若者はコンビニで軽食を買ってばかりしています。あまり噛まなくてもよい軟らかい食物を、短時間で呑み込んでばかりしていませんか。

 よく噛んで食べると、それだけで体が健康になります。咀嚼回数が多くなると、唾液がたくさん出ます。この唾液には私たちの体に有効な働きをする成分がたくさん含まれています。咀嚼のはたらきをまとめてみると以下のとおりです。

第1に、食物が胃で栄養として体内に消化吸収されることを助けるために、細かく砕きます。

第2に、咀嚼の刺激により、殺菌・消化吸収作用を高める唾液が分泌されます。「ムチン」という成分は食品を飲み込みやすくする以外に、食品の刺激を抑えて、胃の負担を軽くします。「アミラーゼ」という成分はでんぷんを分解します。「ガスチン」は味覚を敏感にし、食事をおいしくします。「リゾチーム」「ラクトフェリン」などは、侵入してきた細菌をやっつけます。

第3に、咀嚼の刺激は、脳を経て胃に伝わり、咀嚼運動に見合った胃液が分泌されます。

第4に頭部や骨や筋肉の発育を促進し、維持します。正しい咀嚼を繰り返すことにより、表情が豊かで歯並びのきれいな人間らしい顔ができます。

第5に肥満を防止します。よく噛んで食事をすることにより、唾液が多量に分泌され、血糖値が早く上がります。その結果、満腹中枢に働いて空腹感が満たされます。肥満や糖尿病の予防にもなります。

第6に脳を刺激します。咀嚼運動が刺激を脳に連続的に伝え続け、脳が活発に機能し、眠けが抑えられ、反射神経が鋭くなり、記憶力、認識力、思考力、判断力、集中力、注意力などが高まります。また、よく噛むと子どもは脳の発育をうながし、老人は痴呆症の予防にもなります。噛むときに使う筋肉がよく活動していると、大脳の機能である記憶、認識、思考力、判断力、集中力が高まります。

第7に「EGF(表皮成長因子)」と呼ばれるホルモンは、細胞分裂を促進します。よく噛んで「EGF」がたくさん分泌されると、新陳代謝が活発になり、体が若返ります。

第8に最近の研究で,咀嚼をたくさんすることによって発がん物質の働きの抑制,視力低下の防止,骨粗鬆症の予防などに効果があることがわかってきました。


◆金沢市医師会より

 かつての日本の食卓では、「ゆっくり、よく噛んで食べなさい」と親が子供をしつけていましたが、最近はこうした光景は少なくなりました。小児では硬い食物を咀嚼することによって脳の発育の活性化や口や顎の正常な発育を促し、そして高齢者では咀嚼をしっかりすることが身体的・精神的機能の改善に効果があります。さまざまな種類の食物を、ゆっくりと時間をかけて咀嚼し、味わい、楽しむことにより、総合的な生活の質の向上を得ることができ、生活習慣病を予防することもできます。


・日本咀嚼学会
http://wwwsoc.nii.ac.jp/sosyaku/

・咬合・咀嚼が創る健康長寿
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-19-t1021.pdf