糖尿病教室


透析患者さんは増えています

糖尿病の慢性合併症である「糖尿病性腎症」が悪化すると、透析療法を受ることになります。
下のグラフは日本透析医学会が毎年まとめているデータです。透析療法中の患者数は年々増加しています。

透析導入患者数の推移

新しく透析になった患者さんの原疾患(どういう病気が原因で透析療法になったのか)を割合で表したのが下のグラフです。
糖尿病性腎症によるものは増加傾向にあり、5年ほど前からトップになっています。
もう一つの図は越野病院で透析療法中の患者さんでみた割合ですが、やはり45%もの方が糖尿病性腎症のために透析を受けていることがわかります。

透析導入原疾患の推移   越野病院での透析導入原疾患割合

さて、何度も「透析」という言葉が出てきましたが、皆さんは「透析療法」というものをどのくらいご存知ですか?
言葉では聞いた事があっても、実際にどのようなことをする治療なのかまでは知らないという方が多いのではないでしょうか。
ということで今回は「透析療法」についてお話します。

透析って・・・?

では「透析療法」とはどういうものでしょう?

様々な原因により、腎臓の働きが低下し(10%以下)、腎不全の状態になった場合行われる血液浄化法

を透析療法と言います(短く「透析」と言う事が多いですね)
腎不全かどうかはいろいろな面から見て診断しますが、血液検査では

クレアチニン:8.0mg/dl以上
BUN(尿素窒素):100mg/dl以上  
(どちらも食べ物の最終的な形で、老廃物として尿から体外へ捨てられています。尿が出なくなると身体に溜まって高い値になってきます)

が目安となります。あくまでも目安であって、体がだるい・食欲がない・気持ち悪いといった自覚症状があれば、検査値が低くても透析を導入する場合があります。

最近では、体が少しでも元気なうちに透析を始めるほうが透析療法による体への負担が少ない、という考えで早めに透析導入することもあるようです。

透析の実際

腎臓の働きが低下して腎不全になると、老廃物や毒素を尿として捨てることが出来なくなります。そうして体に老廃物などが溜まって尿毒症という症状が出てきます。
水分も出て行きませんから、体は水でいっぱいになり心臓にも大きな負荷がかかります。

このように体に過剰に溜まった老廃物や水分を人工的に除去するのが透析療法という血液浄化方法です。

どうやって老廃物を除去するのでしょうか?
それは人工腎臓(ダイアライザー)という機械に血液を通すことで行います。

透析のイメージ

腕に採血用と返血用に針を刺し、回路で人工腎臓(ダイアライザー)と繋ぎます。
人工腎臓の中には、薄い透析膜という膜を細いストロー状にしたものがたくさん入っていて、内側を血液が、外側を透析液が流れるようになっています。ここで血液中の老廃物と水分を透析液へと取り除きます。
そうしてきれいになった血液を体に返します。

これを1週間に3回(月水金、あるいは火木土など)、1回当たり4〜5時間行うのが普通です。

「そんなに?!」と思われるかもしれませんが、腎臓が毎日コツコツこなしていた仕事の代わりをするわけですから、少ない回数で短時間だと体に無理がかかってしまいます。週に3回、4時間程度はやはり必要になるのです。

じゃあ、透析をすれば腎臓は治るの?

残念ながら答えはNo!です。

一度腎不全になってしまうと、透析をしても腎臓の働きは元に戻りません
透析は、本来の腎臓の代わりに、体の中に貯まった余分な水分や老廃物を取り除く対症療法にすぎないのです。

ここで、復習!腎臓の働き

老廃物の排泄 体の中で不用になった物を排泄しています。 透析で
補える
水分の調節 腎臓は、体の水分を常に一定に保っています。
電解質バランスの調節 ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、リン(P)、重炭酸(HCO3)などの電解質のバランスを正常に保っています。
血液を弱アルカリ性に保つ 血液をpH7.35〜pH7.45に保っています。
造血刺激ホルモンの分泌 赤血球を作るためのホルモンを分泌して、骨髄に赤血球の製造を促しています。 透析では補えない
ビタミンDの活性化 カルシウムを骨にするために必要なビタミンDを活性化させています。
活性型ビタミンDは腸からのカルシウム吸収を助けています。
血圧の調節 血圧が下がるとレニンと言うホルモンが分泌され、血圧を上げるように働きます。

腎不全になるとこれら全ての働きが低下してしまいます。老廃物の排泄や水分調節などは透析で補えますが、造血刺激ホルモンやビタミンD、血圧の調節透析では補えないので、注射薬や飲み薬が必要になります。
そもそも、日本の透析技術は、世界的に見てもトップレベルです。年々新しい技術や薬が開発され、10年前に比べれば、透析はかなり楽になりました。それでも本来の腎臓のような、きめ細かいコントロールは難しいのです。

糖尿病のコントロールはしなくてもいいの?

これも答えはNo!です。透析療法そのものは糖尿病の治療法ではありません

また、透析療法を始めると、食事内容も変わってきます。糖尿病の時とはまた違う制限があって、改めて食事指導が必要となります。
インスリンやお薬の種類・量も検討しなければなりません。

透析患者さんの声

ここからは、現在当院で透析をされている糖尿病性腎症の患者さんに伺ったお話をご紹介します。

最初の「透析になる前に透析を知っていましたか?」という質問には殆どの方が「知らなかった」という答えが返ってきました。
以下、透析についてのアンケートです。(患者さんの生の声をと思い、方言をそのまま使っています)

「透析」をしなければいけない、と言われた時、どう思いましたか?
  • いやだった。どうしたらいいのか、もう終わりなのか。(透析歴1年・男性)
  • いやです!(大暴れした)透析は棺桶に片足を入れているようなものだと思っていたから。(透析歴2年・女性)
  • いややけど歳も若いし、しんなんもんは、しんなんかな。(透析歴6年・男性)
    (嫌だけどまだ若いし、やらなきゃいけないものはやらないといけないかな)
  • いよいよきたか。しょうがないかな。(透析歴10年・男性)
  • (わかったような、わからんような)せんなんものは、せんなん。(透析歴16年・女性)
    (やらなきゃいけないものはやらないといけない)
「透析」を始めた頃のことを覚えていますか?
  • ぞーっとした。いやでいやで・・・。(透析歴1年・男性)
  • 針刺し(穿刺)が、とにかく痛かった。透析は恐怖になった。(透析歴2年・女性)
  • ふーん、これが血をきれいにするんか。5年はもたんやろうな。(透析歴6年・男性)
  • 仕事の関係で、透析日を調節するのが大変だった。子供も学生だったし、いろいろあって・・・。(透析歴10年・男性)
  • 針刺しが(当時は)難しくて何回も刺したし、透析中はひどくて、精神的にもひどくなった。家に帰っても、歩けなかった。(透析歴16年・女性)
実際「透析」をしてきて、「透析」に対する印象は変わりましたか?
  • 前からみれば慣れた。やっぱり、ないほうがいいけど、同じ仲間(患者さん)がいると思うと、ほっとする。(透析歴1年・男性)
  • 少し慣れたけど、印象は変わっていない(いやだ。怖い)(透析歴2年・女性)
  • これしんかったら、死ぬから・・・。(透析歴6年・男性)
    (これをやらないと、死ぬから)
  • 家族の事が落ち着いて、仕事もやめてから、自分のこと(透析)に専念できるようになった。(透析歴10年・男性)
  • 今は(透析そのものは)つらくない。(透析歴16年・女性)
「透析」をしていてつらい事などありますか?
  • 週3回あるから、どこへも行けない。(透析歴1年・男性)
  • 痛いこと。(透析歴2年・女性)
  • 4時間動けないこと。(透析歴6年・男性)
  • 透析をした後、疲れる。(透析歴10年・男性)
  • インスリンを注射し続けなければいけないこと。(透析歴16年・女性)
現在、糖尿病の治療をされている方へアドバイスなどありましたら教えてください。
  • 先生の言うことを聞いておけばよかった(食べるなと言われるとなお食べたい)。強い意志が必要。悪くなってからでは遅い。当たり前の事がありがたいと思う。(透析歴1年・男性)
  • 仕事が忙しくて・・・。やることはやっとけば良かった。インスリンが良いとは思わないけど、打たんなんものは打たんなん。(透析歴6年・男性)
  • 早めに受診すれば良かった。家族の協力も必要。(病院側は)患者自身の病態をしっかり把握させてほしい。(透析歴10年・男性)
  • (診察で先生に言われたことが)どこか他人事のようだった。意識の持ち方が弱かったわ。お薬にたよって・・・食事もそうやけど、やっぱり、動かんなん。(透析歴16年・女性)

いかがでしょうか?現在透析を受けていらっしゃる患者さんの声が伝わったでしょうか?
透析をしながら仕事をされている方はたくさんおいでますし、国内はもとより、海外旅行に何度も行かれている方もいらっしゃいます。
しかし、頭の中では理解していても、実際に透析を受け入れ、その生活に慣れるには時間がかかるようです。
今回お話していただいたことは、私たちスタッフにとっても貴重な意見でした。
(今回HPでお話を紹介するにあたり、ご本人には了解をいただいております。)

透析患者さんを増やさないために・・・

「透析」なんて関係ない、と思っている方、おいでませんか?
ぜひ全ての方に「透析」を理解することで腎臓の大切さを感じていただけたら幸いです。
腎臓もいろんな仕事を頑張っている・・・今日トイレに行ったら、ちょっと思い出してみてください。

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2008-11-01公開


もりやま越野病院
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