糖尿病教室


今回は、タバコと禁煙のお話をします。

平成15年5月1日に健康増進法が施行され、多くの人が集まる場所(飲食店や事務所など)では、タバコの煙から来客を守るような措置をとらないといけなくなりました(受動喫煙の防止)。そのために今まで時間や場所を決めて喫煙できていた場所も、全面禁煙となってしまい、困っている喫煙者の方も多いのではないでしょうか?

どうしてこんなに禁煙と言われるのでしょうか?

タバコの煙の成分

タバコの話をする場合、主役になるのが「煙」です。

タバコは「煙」を吸っているようなものですが、この「煙」の中に、実に4000種類以上の成分が含まれています。 そのうち有害な成分は200種類以上発ガン物質は50種類以上含まれています。

その全てについてお話できれば良いのですが、さすがに4000種類ともなると大変です。
そこで、タバコの煙の三大有害成分と言われる「タール」「一酸化炭素(CO)」「ニコチン」についてお話します。

タバコの煙の三大成分

タール
いわゆるヤニのことです。油のようにベタベタした粒子で、いろいろな成分をくっつけています。発癌物質やニコチンもこの粒子の中に巻き込まれるようにして入っています。ベタベタしているので喉や肺によくくっつきます。「タバコを吸う人の肺は黒い」の黒色の元ですし、部屋を煤けさせる原因でもあります。タバコを水につけると水が茶色く汚くなりますよね?あれもタールです。タバコを吸うと痰のきれが悪くなるのも、タールのために喉の細胞の浄化作用が落ちているからです。
一酸化炭素
COとも表記されます。「一酸化炭素中毒」という言葉で聞き覚えがあると思います。
酸素よりも赤血球とくっつきやすい性質を持つため、肺で酸素が赤血球に取り込まれるのを邪魔します。そのため酸素が欠乏した状態になってしまいます。タバコを吸っていると息切れがしやすいのもそのせいです。
ニコチン
タバコをおいしいと思う原因の一つです。中毒性の高い薬物で、コカインなどと同様の作用を持っています。頭をすっきりさせたり、落ち着かせたりします。一息吸えばすぐに効果がみられる即効性があります。血管を収縮させる作用があるので高血圧では特に良くありません。

このような成分が「タバコをやめましょう」と言われる原因になっています。

主流煙と副流煙

「タバコの煙って言ったって、吸っているのは本人なんだから」と思われるかもしれませんが、喫煙者だけの問題では済まない所が困るのです。

タバコには2つの煙があります。喫煙者が吸う煙と、タバコの先から立ち上る煙です。

主流煙・副流煙の図

タバコの先から立ち上る煙、紫煙とも言いますが、これを「副流煙(ふくりゅうえん)」と言います。
これに対して喫煙者が吸う、フィルターを通した煙は「主流煙(しゅりゅうえん)」と呼ばれます。

この副流煙にもタールやニコチン、発癌物質などが含まれているために、タバコを吸わない同室者も結局はタバコを吸っているのと同じ状況になってしまいます。

このように周囲の人も副流煙を吸ってしまうことを「受動喫煙(じゅどうきつえん)」または「間接喫煙」と言います。

最近のタバコは良いフィルターを使っていたりしますから、副流煙の方が主流煙よりも有害物質が多いということになってしまいます。
実際に副流煙の方が有害物質が多いというデータもあります。

<タバコに含まれる有害物質の比較>
“副流煙”は、“主流煙”の何倍の有害物質が含まれるか?
参考:厚生省「喫煙と健康」
  主流煙 副流煙 有害作用
ニコチン 1.8 依存性薬物
タール 2.1 発癌物質
一酸化炭素 4.7 酸素欠乏状態
カドミウム 3.6 腎障害
ベンツピレン 3.7 発癌物質
ベンゼン 10 発癌物質
アンモニア 46 肝障害
ホルムアルデヒド 50 目・鼻、気道の刺激
ニトロソアミン 52 発癌物質

詳細すぎてわかりにくいのですが、
平成11〜12年度 たばこ煙の成分分析について(概要)http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/houkoku/seibun.html
のページに厚生労働省が調べたタバコの煙の成分についての表がありますので参考にしてください。

タバコの害

タバコを吸っている人にも、喫煙者の側にいるだけの人にも有害だとされるタバコですが、具体的にどように有害なのかあげてみましょう。

喫煙者本人の害
  • 各種発ガン率の上昇(特に咽頭癌では発癌率は32.5倍にも!)
  • 高血圧の発症・悪化(血管を収縮させることで血圧が上がる)
  • 狭心症・心筋梗塞の発症
  • 末梢血流低下による動脈硬化・壊疽(血管を収縮させることで血流を悪くする)
  • 肺が潰れて呼吸が苦しくなる肺気腫の発症
  • 味覚を麻痺させ、おいしく感じられなくなる。
  • いつも咳や痰が出るので、それがタバコのせいなのか、ガンのせいなのかわからなくなる。
  • 肌の血流が減り、しわが増えて、肌の老化が早くなる。
  • 妊婦の喫煙では早産などの危険が高い。
周囲の人への害
  • 1日20本タバコを吸いつづけている人のパートナーが、肺がんになる確率は約2倍
  • 幼児の喘息様気管支炎を増やす
    (家庭内にタバコを吸う人がいると、吸わない家庭の約3倍、気管支喘息を発症する)
  • 妊娠中の喫煙は、胎児の発育不良をきたす。

最近では小中学生の喫煙も問題になっています。タバコを吸うことがカッコイイとか、大人だとか思うわけですね。
成長期の子供では、タバコの害は大人よりも早く重度に出てしまいます。
子供たちにタバコを吸わせないために、大人が禁煙を始めよう!という動きも出てきています。
また妊婦の喫煙や子供のいる家庭での喫煙も、子供への影響が強いために禁煙が勧められています。

特に糖尿病では!

タバコは、それだけで将来の高血圧・脳梗塞・心筋梗塞の危険因子です。
ましてや糖尿病の方では、糖尿病によるリスクに上乗せされるわけですから、危険度は高くなってしまいます。

糖尿病+喫煙=リスク倍増

また、タバコに刺激で舌の感覚(味覚)が麻痺してしまうので、濃い味でないと満足できず、血糖値が高くなりがちになります。

タバコがやめられない理由

タバコの害なんて聞き飽きた、耳にタコが出来るほど聞いている!という方も多いでしょうし、「タバコを吸うと頭がすっきりする」とか「気持ちが落ち着く」「集中できる」という方も多いでしょう。
自分には必要なんだ、とおっしゃる方も少なくありません。

しかし、それが既にタバコの罠にはまっていることになるのです。

タバコがやめられない理由として、「タバコへの依存」があります。
これには「身体的依存」と「心理的依存」があります。

身体的依存(ニコチン中毒)
ニコチンによる薬物依存症のひとつ。
喫煙を続けていると脳に変化が起こり、今度は喫煙していないと調子が悪くなります。これを禁断症状(離脱症状)といいます。
心理的依存
特に吸いたい気持ちが無いのに、手持ちぶさたな時に何となく火をつけてしまう。タバコを吸えば落ちつけるという習慣(心理的依存、くせ)

「タバコを吸うと頭がすっきりする」「集中できる」というのは、実はタバコを吸っていない時の調子が悪いのです。
集中できない、すっきりしない状態をタバコで「普通の」状態にしているのですが、まるで「普通の時以上」の状態になっているように感じてしまうために、だんだんタバコに依存してしまうのです。

すっきりしている?

禁煙の実施

お酒は少量ならば体に良いといいますが、タバコは百害あって一利なしです。
自分自身のために、また家族や周囲の人のために、やはり禁煙をされることをお勧めします。

そう言うと、
「禁煙する気はあるんだけど」「なかなか禁煙できなくて・・・」「いつも失敗する」
という方がおいでます。
確かにスパっと止められる方ばかりではないでしょう。それでもまず「禁煙しよう!」と思ってください

禁煙しようと決心したら、「自信がついてから」「来月の1日から」などとのばしのばしにせず、 とにかく実行してみましょう。
きっぱりやめるほうが楽です。徐々に減らすやり方では、減らしている間ニコチン切れ症状が続き、ちょっと気がゆるむとすぐ本数が戻ってしまいます。

まず自分が禁煙しようと思い、それを周囲に知らせてください。タバコを吸う人が側にいれば一緒に禁煙を誘ってもいいいでしょう。
もし一緒に禁煙できなくても、目の前で吸わないようにお願いすることもできます。

最近はガムやパッチなどのニコチン製剤なども市販されています。
ニコチン製剤でコントロールできるのは、身体的依存の禁断症状だけで、 心理的依存は自分の意志で克服するものです。ですから、薬を使ったから必ず禁煙できるというわけではありません。
それでも禁煙を助ける手立てにはなります。
ニコチンパッチを処方してくれる病院もありますので、試してみるのもいいでしょう。

ニコチンガムとパッチ

ガムやパッチについてはそれぞれ病院や薬局で詳しい使い方を聞いて、正しく使いましょう。

禁煙で健康を取り戻そう!

禁煙を始めると、体の「元に戻ろう」という力が働き始めて、喫煙での害が少しずつ消えていきます。

禁煙を始めると・・・

インターネット禁煙マラソンのページに面白い表があったので参照させてもらいます。
タバコをやめてからの経過時間と回復の様子です。

  1. 1分禁煙すると、タバコのダメージから回復しようとする機能が働き始める。
  2. 20分で血圧は正常近くまで下降する。
  3. 脈拍も正常付近に復帰する。
  4. 手の体温が正常にまで上昇する。
  5. 8時間で血中の一酸化炭素レベルが正常域に戻り、血中酸素分圧が正常になって運動能力が改善する。
  6. 24時間心臓発作の確率が下がる
  7. 48時間で臭いと味の感覚が復活し始める。
  8. 48〜72時間で ニコチンが体から完全に抜ける
  9. 72時間で 気管支の収縮が取れ、呼吸が楽になる。肺活量が増加し始める。
  10. 2週〜3週で 体循環が改善する。歩行が楽になる。肺活量は30%回復する。
  11. 1〜9ヶ月、静脈鬱血、全身倦怠、呼吸速迫が善する。
  12. 5年で 肺ガンになる確率が半分に減る。
  13. 10年前癌状態の細胞が修復される。口腔癌、咽頭癌、食道癌、膀胱癌、腎癌、膵臓癌になる確率が減少する。

喫煙者でタバコとタバコの間を8時間空けているという人は少ないと思います。
1日禁煙すると心臓発作の確率が下がる、とありますが、「1日禁煙したから」と1本吸えば、結局は発作のリスクは変わらないのです。
結局は禁煙を続けることが大切になってきます。

インターネットも利用しよう!

最近ではインターネット上での禁煙支援が行われています。現在禁煙中の人や禁煙できた人に、愚痴を言ったり相談したりコツを聞いたりすることができます。

ここにご紹介するのは、今回参考にさせていただいたサイトです。
タバコについて知りたい方、「禁煙してみようかな」と思う方はぜひ一度ご覧になって下さい。

インターネット禁煙マラソン(http://kinen-marathon.jp/)
禁煙をマラソンに例えて、コーチや応援者として支援しています。メールによる支援もあり、禁煙に成功した人からのアドバイスも聞けます。
Smoke Free Page(http://www.nosmoking.jp/)
禁煙を希望する人のためのページ。依存のタイプを調べたりタバコにかかっているコストを計算したりもできます。
今までタバコに使っていたお金をもし貯めていたら、海外旅行やマイホームも夢じゃない?!
たばことさよなら!(http://www.tabacotosayonara.com/)
タバコについてのいろいろなデータがわかります。タバコの成分、発癌物質などについてもとても詳しいです。

あきらめないで!

禁煙しようと思って1回目で禁煙できる人は多くありません。やはり「途中で1本吸ってしまった・・・」となってしまいがちです。
しかしそこであきらめないで、「次こそ!」と禁煙へのチャレンジを続ける人が禁煙を成功させるのです。
がんばりましょうね。

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2008-11-01公開


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